4.1. ルーティングの基本
4.1.1. ルーティングの基本
ルータはパケットの送信の際に最適なルートをルーティングテーブルから選び転送する。 この動作はルーティングと呼ばれルータの基本動作となる。
ルータの基本動作
ルータのデータの転送の流れは以下のようになる。
- ルーティング対象のIPパケットを受信する
- 宛先IPアドレスからルーティングテーブル上のルート情報を検索して、転送先を決定する
- L2ヘッダを書き換えてIPパケットを転送する
ルータがIPパケットを転送するには、あらかじめルーティングテーブルに転送先のネットワークの情報が登録されていることが前提となる。 ルーティングテーブルの作成方法にはスタティックルーティングとダイナミックルーティングの2通りの方法がある。
スタティックルーティングとダイナミックルーティング
| 方法 | 内容 | 
|---|---|
| スタティックルーティング | ネットワーク管理者が手動で登録する方法 | 
| ダイナミックルーティング | ルータ間で情報のやり取りを行い自動でルート情報を設定する方法 | 
4.1.2. ルーティングプロトコル
ダイナミックルーティングで使用されるルーティングプロトコルは複数の種類がある。 代表的なものは以下の通り。
- RIP(Route Information Protocol)
- OSPF(Open Shorttest Path First)
- EIGRP(Enhanced Interior Gateway Routing Protocol)
- BGP(Bourder Gateway Protocol)
- IS-IS(Intermediate System To Intermediate System)
ルーティングプロトコルを語るうえでメトリックとアドバタイズという値が重要になる。
メトリック
メトリックは宛先ネットワークまでの距離を表すものとなる。 これは最適なルート選択際に使用される値であり、最も値が小さいルートが優先されルーティングテーブルに登録される。
| ルーティングプロトコル | メトリック値 | 
|---|---|
| RIP | ホップ数 | 
| OSPF | 帯域幅から計算するコスト | 
| EIGRP | 帯域幅, 遅延,信頼性, 負荷, MTUを使う複合的なメトリック | 
アドバタイズ
ダイナミックルーティングでルータ同士が交換しているルート情報はルーティングアップデートと呼ばれ、ルート情報を隣接ルータに通知することはアドバタイズと呼ばれる。
ルーティングプロトコルの分類
使用場面による分類
ルーティングプロトコルは使用される場面で分けると2つの分けられIGPとEGPに分けられる。
IGPは自律システム内(AS)で経路情報を交換するためのルーティングプロトコルの総称。 ASはある組織がある管理ポリシに従い運用しているルータやネットワークをひとまとめにしたものをさす。 ISPが管理しているネットワークなどがASにあたる。
EGPは異なるAS間でやりとりするためのルーティングプロトコルの総称。
| 種類 | プロトコル | 
|---|---|
| IGP | RIP, OSPF, EIGRP, IS-IS | 
| EGP | BGP, EGP | 
アルゴリズムによる分類
ルーティングプロトコルは最適なルートを導き出すための手順/考え方が異なる。 これはルーティングアルゴリズムと呼ばれ、IGPではディスタンスベクタ型、拡張ディスタンスベクタ型、リンクステート型に分けられる。
| 型 | 分類されるプロトコル | 説明 | 規模 | 
|---|---|---|---|
| ディスタンスベクタ型 | RIP | 互いのルーティングテーブルを交換する方式。距離と方向情報を基にベルマンフォード法により最適ルートを選択する | 小・中 | 
| 拡張ディスタンスベクタ型(ハイブリッド型) | EIGRP | ディスタンスベクタ型にリンクステート型の特徴を入れた方式。アルゴリズムはDUALを使用し、帯域幅、遅延、信頼性、MTU、負荷にK値と呼ばれる重み係数をかけてメトリック計算を行う。 | 中・大 | 
| リンクステート型 | OSPF, IS-IS | ルータが自身のインターフェイス情報(LSA)の交換を行う。リンクステートの情報からSPFアルゴリズムを用いて計算を行い最適ルートを選択する | 中・大 | 
| 各項目 | ディスタンスベクタ型 | 拡張ディスタンスベクタ型(ハイブリッド型) | リンクステート型 | 
|---|---|---|---|
| アルゴリズム | ベルマンフォード | DUAL | SPF | 
| 交換情報 | ルーティングテーブル | ルーティングテーブルの一部 | リンクステート(インターフェイス状態) | 
| コンバージェンス速度 | 遅い | 速い | 速い | 
| ルータの処理負荷 | 小さい | リンクステートより小さい | 大きい | 
| 帯域消費 | 高い | 低い | 低い | 
| ルーティングループの発生 | あり | なし | なし | 
| プロトコル | RIP | EIGRP | OSPF, IS-IS | 
クラスレスルーティングプロトコル/クラスフルルーティングプロトコル
クラスフスルーティングプロトコルはルーティングのアップデートにサブネットマスク情報を含めることができるルーティングプロトコルのことで、クラスレスルーティングプロトコルはサブネットマスク情報を含めないルーティングプロトコルのこと。
| プロトコル | 代表的なプロトコル | 
|---|---|
| クラスフルルーティングプロトコル | RIP(Ver 1.0) | 
| クラスレスルーティングプロトコル | RIP(Ver 2.0), OSPF, IS-IS, EIGRP, BGP | 
アドミニストレーティブディスタンス
ルータでは複数のルーティングプロトコルを同時動作させることができる。 その場合どのルーティングプロトコルで得た情報をルーティングに使用するか判断する必要がある。 Cisco製品のルータの場合はアドミニストレーティブディスタンス値(AD値)を使用しそれを決定する。 AD値はルーティングプロトコルに対する信頼性を表す値。
アドミニストレーティブディスタンス値はルーティングプロトコルの優先値であり小さいほど優先度が高い。
| プロトコル | アドミニストレーティブディスタンス値 | コード | 
|---|---|---|
| 接続接続されているネットワーク | 0 | C | 
| スタティックルート | 1 | S | 
| eBGP | 20 | B | 
| EIGRP | 90 | D | 
| OSPF | 110 | O | 
| IS-IS | 115 | i | 
| RIPv1,v2 | 120 | R | 
| iBGP | 200 | B | 
手動で設定したスタティックルートはアドミニストレーティブディスタンス値(以下ad値)が1となるため優先度が高い。 これは障害発生時にダイナミックルーティングでルート学習できなくなった際にこのルートを使用するといったことが可能。 このスタティックルートはフローディングスタティックルートと呼ばれる。
最適経路の選択
ルーティングにおいて最適経路は以下の順位で算出される。
- ロンゲストマッチ(最長一致)
- AD値(アドミニストレーティブディスタンス値)
- メトリック
経路集約
経路集約はRIPv2、EIGRP、OSPFで使用できる機能で複数のサブネットワークのルーティングアップデートを1つに集約して送信できるもの。 これによりルーティングテーブルのサイズが縮小され、コンバージェンス時間も短縮される。
注意点として経路集約を行う際は集約を行うアドレスの上位ビットは同じである必要がある。