4.3. EIGRP

4.4.1. EIGRPの概要

EIGRPは使用用途でルーティングプロトコルを分けた際にIGPに分類されるルーティングプロトコル。現在最も使用されている。 また以下のような特徴を持つ。

  • クラスレスルーティングプロトコルで自動集約をサポート
  • 自身が属しているAS番号内の経路をInternal(内部)、他のAS番号に属している経路やEIGRP以外のルーティングプロトコルで学習した経路をexternal(外部)として識別
  • 拡張ディスタンスベクタ型ルーティング(別名:ハイブリッドルーティング)
  • 「ネイバーテーブル」「トポロジテーブル」「ルーティングテーブル」の3つのテーブルを保持
  • ルーティングアルゴリズムはDUALを使用
  • メトリックには、帯域幅・遅延・信頼性・負荷を基に計算する複合メトリックを使用
  • メトリックが等しくない経路での負荷分散が可能な不等コストロードバランシングをサポート
  • IPだけでなく Novell IPXやAppleTalkのルーテッドプロトコルもサポート

複合メトリック

EIGRPは最適な経路を選択するために、帯域幅・遅延・信頼性・負荷を基に計算する複合メトリックを使用する。 使用する内容は以下の通り。

  • 帯域幅:宛先ネットワークに到達するまでに経由するリンクの最小帯域幅(kbps単位)
  • 遅延:宛先ネットワークに到達するまでに経由する各インターフェースの遅延(delay)の合計(10マイクロ秒単位)
  • 信頼性:宛先ネットワークまでのリンクの信頼性。ビットエラーなどが発生すると信頼性は下がる(最も信頼できるものが255)
  • 負荷:宛先ネットワークまでのリンクでのトラフィック量。トラフィックが高いと負荷が上がる(最も負荷が低いものが1)

FD/RD

EGIRPではFDとRDの2種類のメトリックがあり、それはサクセサとフィージブルサクセサの決定に関係する。

メトリック説明
FD(Feasible Distance)自ルータから宛先ネットワークまでの合計メトリック
RD(Reported Distance)ネイバールータから宛先ネットワークまでの合計メトリック(ネイバーが教えてくれたメトリック)

サクセサとフィージブルサクセサ

サクセサはEIGRPの最適経路のネクストホップのことをさす。 サクセサは宛先ネットワークまでのFDが最も小さくなるネクストホップとなる。

フィージブルサクセサはサクセサのFDよりも小さいRDを通知するネイバのことを言う。 フィージブルサクセサの条件である「FD > RD」を満たす経路はルーティングループが発生しないことが保証されるので、フィージブルサクセサはバックアップルートや不等コストマルチパスのネクストホップとして使われる。

EIGRPの保持するテーブル

EIGRPではネイバーテーブル、トポロジテーブル、ルーティングテーブルの3つのテーブルを保持/使用する。

ネイバーテーブル … EIGRPのネイバー関係を確立しているルータの一覧表 トポロジテーブル … EIGRPで学習した全経路情報を保持するテーブル ルーティングテーブル … トポロジテーブルからサクセサルートを抽出したテーブル

EIGRPの隣接関係構築条件

EIGRPでは以下の条件を満たす場合に隣接関係が構築される。

  • ルータが同じ自律システム(AS)に所属している
  • メトリックの計算値(K値)が一致している
  • 認証情報(キーIDとパスワード)が一致している
  • Helloパケットを送受信するインターフェースが同一のサブネットに属している(前提条件)
  • Helloパケットを送受信するインターフェースでEIGRPが有効になっている(前提条件)

4.4.2. EIGRPの動作

EIGRPにおける最短経路は以下のように算出される。

  1. 宛先ネットワークから自身までのすべてのネイバ経由のFDを算出する
  2. 宛先ネットワークから自身までのFDのうち、最も小さいFDになるネイバを「サクセサ」とする
  3. サクセサのFDと各ネイバのRDを比較し、FD > RDとなるネイバを「フィージブルサクセサ」とする
  4. サクセサをネクストホップとする経路をルーティングテーブルに載せる